「拒否権」
国連の安全保障理事会(安保理)において常任理事国の5カ国(米、中、英、仏、露)だけが持つ拒否権。
5カ国のうち1カ国でもこの権利を行使する国があった場合、対象となる議案は否決されてしまいます。
古代ローマにおいても執政官や元老院の決定に対して護民官は所有する拒否権を発動させてその決定を無効にすることが出来ました。
このように、能動的・意図的に何かをしようとする「力」より、拒否する「力」のほうが強力だったりします。
唐突にこのような話を持ち出したのは、今年も千葉ロッテマリーンズの春季キャンプに帯同して感じたことがとても似ていると感じたのがその理由です。
指導者をされているのは厳しいプロの世界で実績を残された方々で、みなさんそれぞれの「型」をお持ちです。
それは4スタンスでいうところの「タイプの動き」であり「個体定理」です。
理論上完璧にタイプ通りとまでは行かなくても概ねパッとみてどのタイプか比較的わかりやすいことが多いです。
そういう方々に敢えて違うタイプの要素を入れて動いていただこうとすると「ちゃんと動けない」「これでは無理」という反応をされます。
私達は概念としての「軸」を言語化された状態で理解しています。
まず「正しく立つ」 「全体定理を意識的に行う」ということから始めてそこから自然発生する「タイプの動き」を確認していくことが肝要としていますし全ての動作において安全で確実な手順でもあります。
それとは異なり、その競技における方法論や慣習を手がかりに自分にあうものを見つけて積み上げていった結果、その選手のタイプに適った動きを習得した、というのが大半な印象です。
嫌な感覚がなく動けるフォーム、それを確立出来れば道は拓けると思います。
現に先頃野球殿堂入りされたあのレジェンドの方も「どのボールにも対応出来る構え方、打ち方を積み重ねていったら今の形になりました」とおっしゃっていました。
そのうえで、その方のタイプとは違った要素を試してもらうことで感じたであろうことは私たちで言う「軸」 を崩される感覚が発生し、その状態での動作を脳も身体も「拒否」したからではないかと推測できます。
このように、数多ある方法論で自分に合致するものを選び出す(「個体定理」の蓄積から徐々に「全体定理」の構築を行う)のはなかなか困難な作業ではないかと思いますし故障や怪我のリスクを抱えながらの日々になるのではないかと思います。
とすれば、まず「軸」を作りそれを崩す要素に対して「拒否権」を発動する身体へのアプローチを行うほうがはるか近道で確固たるものになるのではないかと思います。
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