「長文の続き」
前回の「ボールを遠くに飛ばすのに(強い出力のために)大きな筋肉は必要か?」の続きです。
結論からすると「完全に否」だと思います。
20年以上前ですが、プロ野球マスターズリーグにトレーナーとして参加させていただいた時に、試合前のバッティング練習の時に外野守備や球拾いもしたのですが、それまでの野球人生で一番衝撃を受けた出来事です。
打席では引退されて間もない駒田徳広さんが打っておられました。
60代の方々もいらっしゃる中なので40代の駒田さんはまだ現役でもいけそうなスウィングをされていました。
その打球が自分が守っているライトに飛んで来た時に、一応野球経験も外野守備経験もある感覚で落下地点を見極めたのですが、ボールが一向に落ちてこないのです。最後は自動車バック(注・下手っぴな取り方)で何とか捕球出来たのですが、そばにおられた選手の方に「お前ホントに野球やってたのか?」と笑われました。
私は「大学までやりましたけどこんな打球見たことないですよ!」とお答えしたら「確かにそれはそうだな」と納得されました。
駒田さんの打っている様子から決して「思いっ切り振ってる」感じは全く無く、軽く振り出してインパクトの瞬間両足で強く地面を踏んでいる様子は外野からもはっきり確認出来ました。
また、一見ボールの下を擦った感じの打球が揚力を得て、まるで空を飛んでいく風船にでもついていているかのようにフワフワと東京ドームの天井付近を漂っている感じでした。
以上の2点から、打球に飛距離を出すには「力を入れるのはインパクトの瞬間だけ、しかも手や腕でなく強く踏むことが力を入れること」「打球角度とバックスピンが充分であれば飛距離は出る」ということです。
これは現在のプロ野球選手の練習を見ていても思うことで、若手が力一杯振って打った打球より、ベテラン選手が駒田さんのように「インパクトの瞬間」で出力とどうボールにバットをコンタクトすれば飛ばせるか、を熟知して打った打球の方がより遠くに飛んでいました。
またインパクトの音が若手の「カーン」に対して「グシャ」というボールが潰れているような音がします。
強く叩く=デカい体が不可欠という打撃論から入ってしまうと永遠にみえてこない領域だと思います。
特に小中学生の指導者の方々には、少なくとも「強いインパクトとは」を野球経験初期の段階から子供たちに伝えて欲しいものです。
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