「床屋さんのハサミ2」
前回のコラムの中で、髪切りハサミの刃には微妙に反りや捻れがあるという、床屋さんが教えてくださったお話をお伝えしました。
今回はその流れをもう少しお話させていただきたいと思います。
まず「ハサミで切る」という身体行為としては、ハサミの2つの穴に指を通して握り込むという単純な事かと思います。
ペーパーバサミの場合は刃に捻れがないため、刃元側から刃先側に向かって真っ直ぐ押し出すような力が働く。
対象が紙というひと塊りの物質であれば、それでも充分に切る事が出来ます。
でも髪の毛という1本1本が分かれているものは、切ろうとすると押し出されて逃げてしまい、うまく捕らえる事が出来ない。
床屋さんのハサミには反りや捻れがある事で髪の毛を逃がさず、垂直に捕える事が出来るように作られているのかと思います。
それが床屋さんがおっしゃっていたペーパーばさみは「線」、髪切りばさみは「点の移動」で切る、という事の意味なような気がします。
そのお話を聞いて改めて感じた事は、「形と機能は直結している」という事です。
そもそも「道具」とは何か動作目的を持った時に、それを実現するために自身の身体と対象物の間に存在するもの。
余計な操作や考えを巡らせなくても、「こうする」と思った事をダイレクトに実現させるために手助けとなるもの。
脳と骨格も同じことですよね。
脳が望んだ事を具現化するために骨格は道具として使われる。
一つ一つの骨体にも捻れや反りがある。
脳が「投げる」「走る」などシンプルに動作を要求した時に、その骨の形状に沿って体幹から動く事で、無駄なく無理なく力が末端まで伝わっていく。
逆に手の使い方や足の接地の仕方など、末端意識を持ち過ぎたり、力感を求める事などをしてしまうと自然な動きを邪魔する事になってしまいます。
より骨格の構造に沿った動作、形状通りに機能させる事を目指していきましょう。 |