「モンブラン」
自宅近くにあった、あるケーキ屋さんが9月末日をもって約40年の歴史に幕を下ろしました。閉店の理由も特に明かされることなくお店のシャッターに張り紙があるだけの告知でした。
お手頃な値段と、昭和レトロいとも保守本流ともいえるケーキはどれも美味しく、特にリンゴにしっかりとした酸味のあるアップルパイと所謂黄色い王道のモンブランを気に入って購入していたので、あの味をもう味わえないと思うととても残念です。
この、モンブランというケーキは私の幼少期の、今程ケーキの種類が豊富で無い時代から苺のショートケーキやシュークリームと一緒にショーケースに並び続けた「古典」ともいえるものかと思います。
ですが、世代や地域によって「モンブラン」と聞いて想像する姿、形、色などは結構分かれるのではないでしょうか?
基本形の栗のものでも、上に乗っている甘露煮や細く絞り出されたマロンペーストが黄色いものや渋皮皮付きの茶色いもの、和栗を謳ったり、ベースの部分もスポンジのカップケーキやタルトなど。いまではさつまいもや南瓜、苺もものまで見かけます。
ざっと思いつくだけでもこれだけ多種多様に進化を遂げたモンブラン。作り手の方たちが工夫や研究を重ねていかれて変化を続ける中でも、やはり「原型」「基本」といわれるものは存在し続けます。
ある一つのものに触れた時、感じる印象や感想は十人十色ですし、その先、どんなイメージをもって発展させていくかは各個人が持つ経験や知見、感覚によって大きく異なります。そして、「原型」の完成度が高いほど「進化系」のバリエーションは多様になり発展を続けると同時にどんなに手が加えられていったとしても「原型」の素晴らしさもまた再認識され続けていくのではないか、と個人的には思っています。
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