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一口コラム
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こちらのコラムでは週替わりで先生方が順番にお話しをしてまいります。
 
施術部部長 小杉英紀

第587回 一口コラム

今回の担当は
施術部部長 小杉英紀です。

令和3年9月15日

 

「江夏の21球」

ご存知の方もたくさんのいらっしゃると思いますが、故山際淳司さんのデビュー作となる短編ノンフィクションです。
1979年のプロ野球日本シリーズの近鉄(現オリックス)ー広島の第7戦の9回裏の攻防を、その時マウンドに立っていた江夏豊投手の様子を中心に描いた作品です。21球は江夏投手がこの試合の9回裏に投じた球数です。現在は「スローカーブを、もう一球」という短編集の文庫に収録されています。

経過と結果からいえば、1点差で広島がリードし逃げ切れば日本一という状況で迎えた9回裏にむかえたノーアウト満塁のピンチを切り抜けた、というものです。

40年以上前のプロ野球の様子も垣間見えますし、選手達の心理描写が克明で今読んでも緊張感が伝わってきます。

例えば、当時の広島の抑えのエースだった江夏投手は7回から当番しています。今のように投手の分業制は確立されておらず、いわゆるセットアッパーにあたる「中継ぎ」は専門職というより先発からの降格だったり故障明けの様子見といった感じでした。ましてや先発投手は9回完投が当たり前だったので、この試合も中継ぎを挟まず「7回から守護神登場」という今では信じられない投手起用法でした。
また、絶体絶命の大ピンチでの広島ベンチの思考や対応と、江夏投手と彼を取り囲むグラウンドに立つ選手達のとの気持ちのズレ。

時代とともに野球そのものはもちろん、取り囲む環境も刻々と変化していきますし、同じ状況に置かれていても、見る角度や立ち位置によって考え方も異なるでしょうし、理想と現実の狭間で葛藤することもあると思います。ですがある意味「古典」といってもいいこの作品を改めて読み返したことで思うことの意味は大きいです。

以前触れたものでも年月が経過してからだと違った印象や感想が得られるのはとても面白いですね。

ちなみに、「江夏の21球」は有名動画配信サービスでも視聴出来るようですので、是非文章と合わせてご覧になって見てください。


 
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