「ある格闘技の試合を観て」
先日の日曜日にUFC264という総合格闘技の試合がラスベガスで開催されました。
今回のコラムはそのテレビ中継を観て感じた事を書きたいと思います。
メインではなくアンダーカードでしたが、白熱した試合になりました。
選手にはそれぞれ身体の特性を活かしたファイトスタイルがあります。
この2人はまずそれが対照的でした。
細身の長身でリーチを活かして闘うオマリー選手VS小柄のガッシリとした体格で距離を詰めて連打を打ち込みたいモウティーニョ選手。
それぞれ得意な間合いが全然違います。
このファーストコンタクトを制していたのは、完全にオマリー選手でした。
モウティーニョ選手が自分の得意な間合いに持ち込む為に、前に出て距離を詰めようとするのですが、その前に的確にジャブや前蹴りをヒットさせて中に入らせません。
かなりの数をヒットさせ、2ラウンド目には一瞬相手の腰が落ちるシーンもありました。
最終3ラウンド目には、モウティーニョ選手の顔面は血にまみれていました。
ここまで書くとオマリー選手の一方的な試合のようですが、
この試合を熱くさせたのはモウティーニョ選手の頑張りでした。
パンチや蹴りをまともにもらっているのですが、とにかく前に前に出ていくのです。
結果オマリー選手は有効な打撃を当てているのに、プレッシャーをかけられて下がらされる展開になり、試合のペースを掴む事が出来ません。
まるでゾンビを相手にしているようでした。
試合結果は最終ラウンドに意を決して連打を打ち込んだオマリー選手のTKO勝ち。
最後まで愚直に前に出続けたモウティーニョ選手は、レフェリーに試合を止められても「何故止めたんだ、まだ出来る」というアピールをしていました。
試合後、勝者のオマリー選手は疲れた様子で「本当に強い相手だった」と相手選手の健闘を称えていました。
試合を観て感じた事は、
試合中の相手の動きに対して、出来るだけ早い段階でアジャストしていく能力の必要性です。
オマリー選手は、無類のタフネスで前進し続けてくる相手に対して自分の打撃の距離を保とうとするあまり、後ろに下がらされるプレッシャーを受け続ける展開になって消耗してしまいました。
相手との距離を保つのではなく、最終ラウンドのように下がらずに、自分の身体の中にスペースを作る事が出来れば、もっと早いラウンドでカウンターをとれたように思います。
そうすれば更に手強い選手になる事でしょう。
モウティーニョ選手は相手のインパクトゾーンを早い段階で読み切り、その距離をいかに素通りして安全に中に入るかという事が課題になります。そのための体幹を柔軟に使ったボディーワークが必須かと思いました。
それが出来れば、あのタフネスさは脅威だと思います。
器用なだけでも、愚直なだけでも駄目。
刻々と変化する状況を客観的に読み切り、自分を変化させ続けて結果に結びつける事。
最後まで気持ちを切らさない事。
2人の格闘家の壮絶な闘いに、
大切な事を教えていただいた一戦でした。 |