「基本と特殊」
みなさん、こんにちは。
プロ野球のペナントレースも両リーグともに優勝が決まり、残りのCSへの出場権をかけた戦いが佳境になってきました。
今年のプロ野球と言えば、東京ヤクルト・バレンティン選手が年間本塁打記録を、東北楽天の田中将大投手が開幕から、また昨シーズンからの連勝記録をそれぞれ更新(未だ継続中)した事が大きな話題となりました。
特に田中投手の連勝記録はアメリカのメジャーリーグの記録をも書き換える、という快挙も達成しています。
一年間ローテーションを守り続けたチームのエースが
「22勝1セーブ」
という「敗数が記載されない投手成績」
を目にする事は恐らくこの先無いのでは?と思わせるぐらいの偉業だと感じています。
特に印象的だったのは、優勝を決めた9月26日の埼玉西武戦。
1点リードした状況でリリーフでマウンドに上がった田中投手は、1死2,3塁の一打サヨナラ敗け、のピンチを迎え西武の主軸3番栗山、4番浅村を迎えました。
結果は、栗山選手を見逃しの3球三振、浅村選手も5球で三振に切ってとって見事に胴上げ投手となりました。
この怖い両選手に投じた「8球」は全て外角低めの150km/h超えの直球でした。
直球もさることながら、縦に鋭く変化するスライダーとスプリットも彼の代名詞といえる程の超一級品のウイニングショットですが、
「ここは引いたら負けだ」と直球勝負に拘り、打者を牛耳りました。
野球、特に投手やそれをリードする捕手にとって「外角低め(アウトロー)」は、投球の組立てや配球を考える上での基本中の基本です。
それは、
「打者から一番遠くて確実にミートするのが難しい」
というのが一番の理由です。
「困った時のアウトロー」
との格言がある程ですし、逆にこのコースへのボールの制球やキレを欠く中での投球やリードはバッテリーにとって非常に苦しいものとなります。
しかし、この場面で田中投手は恐らく全力に近いボールを、嶋捕手の構えるミットがほぼ動く事ない程の精度(2球ボールにはなりましたが)で投げ続けました。
投手の基本であり生命線となる「外角低め」へ球速、キレ、ストライクゾーンギリギリへのコースとどれをとっても完璧、といえる投球は、プロ野球の主軸でも打つ事が困難な
「特殊な勝負球」
となり得るのです。
それも、田中投手が「基本」を丁寧に繰り返し積み重ねた結果であり、特別な場面でその「基本」が手も足も出ない様な「特殊」な球となった様に思えた場面でした。 |